裁判所の判例と過払い金
平成21年6月18日の名古屋高等裁判所判決では、過払い金が発生している可能性があるにも関わらず取引経過の一部を開示しない業者に対し、「被控訴人の借入残高を0円であるとすることの当否」について、下記のような判決が出ています。
「控訴人は、平成3年11月11日に被控訴人が1万6000円の返済をする前の時点での借入残高は、27万1371円であるから、平成3年11月10日の時点での被控訴人の借入残高を0円であるとすることはできないと主張する。
しかし、上記貸付けに関わる約定利息は、利息制限法1条1項所定の制限利率を超えるものであり、かつ、前示のとおり、昭和62年3月5日から平成3年11月10日までの間、被控訴人は、同月11日以降と同様の態様で借入と弁済を繰り返していたものと推認できるから(これを覆すに足りる取引履歴その他の証拠はないし、借入と弁済の状況に違いがあったことを窺わせる事情も見出せない)、むしろ、同月10日の時点で既に過払い金が発生している可能性がある。
また、前示のとおり、貸金業者である控訴人が取引履歴の一部を開示しない以上、当事者間の公平の見地から、上記時点で借入金の残高を0円としてその後の過払い金を計算するのもやむを得ない。
これらの点からすれば、上記時点での被控訴人の借入残高は、0円であると推認するのが相当である。」(平成21年(ネ)第201号・不当利益返還請求訴訟事件)
この他にも、「貸金の存在は、貸主において立証すべきであるから、その立証がない異常、過払金計算の開始時点において貸金残がないものとして計算することは是認できる」というような判決が出ているものが多く、取引の最初の記録がなかったとしても、決して契約者に不利になることはありません。
では、途中までしか取引経過がわからない場合には、具体的にどのように計算をしていくのか?
このようなケースの場合に使う方法が、途中までの取引経過に記載されている残高を無視する「残高ゼロ計算」といいます。
業者が開示しない取引については、残高を“ゼロ”とみなし、取引経過に記載されている年月から引き直し計算をして過払い金を割り出していきます。
それでも、業者が抵抗をしてくるようなら、それ以前の残高があることを証明する「貸付けをした事実証明」を求めましょう。裁判でも、取引経過の一部を開示しない業者には、残高ゼロ計算も仕方のないことだという判決が出ているのですから安心してください。
金融庁事務ガイドラインでは、貸金業の登録業者が取引経過の開示を拒否する行為は禁止されていますので、どうしても開示してこない場合、監督官庁に行政指導をするよう要請する手もあります。



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